離婚手続きの概要(日本人と韓国人夫婦の場合)
準拠法
法の適用に関する通則法(以下「通則法」といいます。)第27条と第25条によると、夫婦の「本国法」が同一であるときはその法律によるとされます。他方、同一の本国法がない場合には夫婦の常居所地法が同一であるときはその法律によるとされ、夫婦の一方が日本に常居所を有している日本人の場合については日本法が適用されるとされています。
その結果、日本に住む日本人と韓国人夫婦の場合には日本法によって離婚の問題について判断されます。
協議離婚の方法
上記のとおり日本法が適用されますので、韓国人同士の夫婦の場合と違い、離婚意思の確認を韓国総領事館で受ける必要はありません(上の図参照)。そのため、日本に所在する区役所等に協議離婚届を提出すれば離婚は成立します。
裁判上の離婚原因(日本に住む日本人と韓国人夫婦の場合)
準拠法
法の適用に関する通則法(以下「通則法」といいます。)第27条と第25条によると、夫婦の一方が日本に常居所を有している日本人の場合については日本法が適用されるとされています。その結果、日本に住む日本人と韓国人夫婦の場合には日本法によって離婚の問題について判断されます。
裁判上の離婚原因
原則として離婚訴訟を提起する前に日本の家庭裁判所での離婚調停を経ることが必要となります(調停前置主義)。
離婚調停では、調停委員と呼ばれる方が夫婦双方の話を聞き,離婚の合意や子の親権、養育費の額、面会交渉、財産分与等の離婚の条件についてそれぞれの意見調整を行います。
そして、調停において離婚が成立すれば、韓国領事館や日本の区役所等で離婚手続きを行うことになります。他方、調停が成立しない場合には離婚裁判を提起し、離婚を求める必要があります。その場合、離婚が認められるためには離婚原因が必要となります。
日本の民法770条1項の1号から5号は、裁判上の離婚原因を次のように規定しています。
770条 | 離婚事由 |
1号 | 配偶者に不貞な行為があったとき |
2号 | 配偶者から悪意で遺棄されたとき |
3号 | 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき |
4号 | 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき |
5号 | その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき |
有責配偶者からの離婚請求(日本に住む日本人と韓国人夫婦の場合)
準拠法
法の適用に関する通則法(以下「通則法」といいます。)第27条と第25条によると、夫婦の一方が日本に常居所を有している日本人の場合については日本法が適用されるとされています。その結果、日本に住む日本人と韓国人夫婦の場合には日本法によって離婚の問題について判断されます。
有責配偶者からの離婚請求
自ら婚姻破綻の原因を作った配偶者、つまり有責配偶者からの離婚請求に関し、最判昭和62年9月2日は、有責配偶者からの離婚請求については信義誠実の原則に照らしても容認されうるものであることを要するとしつつ、その考慮要素として①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、②その間に未成熟子が存在しないこと、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできないと判示しました。
子どもの親権と養育権(日本に住む日本人と韓国人夫婦の場合)
準拠法
現在、韓国人と日本人の夫婦間から生まれた子は日本国籍と韓国国籍の二重国籍となります。このような場合、通則法38条1項但し書きは、複数ある国籍の一つが日本国籍である場合には日本法が本国法となるとしています。したがって、その子の本国法は日本法となります。そして、通則法32条により、両親の一方の者と同一本国法である日本法が準拠法となります。
親権の内容
親権とは、子の監護及び教育の権利義務、居所指定権、懲戒権、子の財産に対する管理権、法定代理権、同意権により構成されます。
なお、親権とは親の一方的な権利ではありません。あくまで子の福祉を実現するために特別に認められた親の権利・義務となります。
親権者の決定方法
まず、協議離婚の際には父母の協議によって親権者を定めることになります。
次に、裁判上の離婚の場合には家庭裁判所が職権でどちらか一方の親を親権者と決定します。決定の基準は次のとおりです。
① 監護の実績・継続性の尊重
② 子の意思の尊重
※10歳前後から子の意思が重視されているといわれています。
③ 他方の親と子の面接交渉に対する寛容性
④ 奪取の違法性
⑤ 母性の優先
※ただし、現在は母性優先という基準は後退しているといわれています。
子どもとの面会交流
子との面会交渉
離婚により、子を直接養育しないことになった父母の一方と子は、お互いに面接交渉する権利が認められます。面接交渉権は、離婚後も父又は母との信頼関係を引き続き維持し、子の情緒の安定と円満な人格の発達を目的としています。
面接交渉権の具体的な行使方法と範囲については、まず、父母の協議により決められ、協議が調わないとき又は協議できないときには、当事者の請求又は職権により、家庭裁判所が定めることになります。
面接交渉の頻度については、明確な基準はありませんが、子を直接養育しない父母と子との間の信頼関係を維持・発展させるためには、最低1か月に1回の面接交渉が必要と考えられています。ただし、子の福利のために必要なときは、当事者の請求又は職権により、家庭裁判所は面接交渉権を制限し、排除することができます。