相続の解決・相談事例

事例①【被相続人が韓国国籍の場合の遺産分割協議】

【事案及び経緯】

亡くなった父親(以下「被相続人」という)には、配偶者である後妻、前妻(依頼者の母)との間の子どもが3人いましたが、被相続人の国籍が韓国籍であったため、韓国法が適用されることを知り、韓国の法律に詳しい弁護士を探すこととなりました。

【日本民法と韓国民法の相違点など】

法定相続分の割合。
相続に必要な資料の取り寄せなどの手続き。
解決のPOINT!
今回のケースにおいて、日本民法が適用された場合、法定相続分は、配偶者である後妻が2分の1、子どもが各々6分の1となります。しかし、在日韓国人を被相続人とする相続問題については、被相続人の本国法である韓国民法が適用されます。その結果、今回のケースにおいて、法定相続分は、配偶者である後妻が3分の1、子が各々9分の2となります。今回のケースでは、子どもである依頼者の法定相続分は、日本民法が適用される場合よりも多くなります。当センターの弁護士が遺産分割協議を代理し、被相続人の配偶者である後妻に対し、その法定相続分が日本民法の場合よりも少なくなることを説得した結果、依頼者が満足する遺産分割協議の成立となりました。
また、今回のケースの解決に必要な資料(被相続人の除籍謄本等)は、区役所等ではなく、韓国総領事館で取り寄せなければなりません。当センターは、韓国総領事館における除籍謄本等の取り寄せなども代理して行っております。また、必要によっては、取り寄せた除籍謄本等の翻訳も行っております。今回のケースでは、当センターが韓国総領事館での取り寄せ及び翻訳作業を行った結果、スムーズかつ適切に相続手続きが完了しました。

 

事例②【被相続人が韓国国籍の場合の相続放棄】

【事案及び経緯】

おじいちゃん(韓国籍)は、配偶者であるおばあちゃん、子どもである私の父一人、私を含めて孫2人を残して亡くなりました(おじちゃんの両親はすでに他界し、他に兄弟もいません)。おじいちゃんは、めぼしい資産はなく、生前、日本と韓国のそれぞれに借金があると言っていました。おじいちゃんの相続には、韓国法が適用されることを知り、韓国の法律に詳しい弁護士を知人から紹介を受けました。

【日本民法と韓国民法の相違点など】

法定相続人
相続放棄の時期
韓国にも借金がある場合の処理
解決のPOINT!
■前提
在日韓国人を被相続人とする相続問題には、被相続人の本国法である韓国民法が適用されます。よって、今回のケースも亡くなったおじいちゃんが韓国籍であるため、韓国民法が適用されます。
■法定相続人について
今回のケースで、日本民法が適用される場合、法定相続人は、配偶者であるおばあちゃんとその二人の間の子(相談者から見て父)となります。
しかし、韓国民法が適用される今回のケースの場合、法定相続人は、配偶者と直系卑属となります。すなわち、直系卑属が相続人となるため、今回のケースで、子である父が相続放棄した場合、孫2人が相続人となります。そのため、今回のケースでは、孫2人の相続放棄も検討しなければなりません。
■相続放棄の時期
・日本民法の場合は、
第915条
1 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。最判昭和59年4月27日(民集38巻6号698頁)
被相続人に相続財産が全く存在しないと信じるにつき相当の理由があると認められるときには、相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識し得た時から起算
・韓国民法の場合
第1019条
1 相続人は、相続開始があったことを知った日から3か月以内に、単純承認若しくは限定承認又は放棄することができる。ただし、その期間は、利害関係人又は検事の請求によって、家庭裁判所がこれを延長することができる。
2 相続人は、第1項の承認又は放棄をする前に、相続財産を調査することができる。
3 第1項の規定にかかわらず、相続人は、相続債務が相続財産を超過する事実を重大な過失なくして、第1項の期間内に知ることができず、単純承認をした場合には、その事実を知った日から3か月以内に、限定承認をすることができる。
※3項を置くことで、日本の判例法理と同じく、過剰な相続債務の存在を知らない相続人を救済。この3項を特別限定承認という。
以上のとおり、韓国民法の場合、相続人は相続開始があったことを知った日から3か月を経過すると、特別限定承認をする必要があるため、注意が必要です。
■韓国にも借金がある場合の処理
相続債務が日本にのみある在日韓国人の通常の相続においては、相続財産所在地により国際裁判管轄権が認められ、行為地たる日本の家庭裁判所に対する相続放棄の申述が適法な方式と認められます(法の適用に関する通則法10条2項)。
しかし、日韓両国には、他国における相続放棄の効力を国内において認める趣旨の特別な
規定は存在しません。そのため、韓国内にも相続債務がある場合、韓国の家庭裁判所に対し、韓国民法に従った相続放棄の申告を行う必要があります。韓国内に住所のないときは、ソウルの家庭法院に申述します。

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