弁護士李ブログ‐「私が悪いけど、配偶者と離婚したい!」‐有責配偶者からの離婚請求-

「自分の浮気が原因で妻との別居が始まりました。別居してかれこれ10年が過ぎようとしています。私の過ちが原因だということはわかっているのですが、私と妻との夫婦関係は完全に破たんしてしまっています。

ですが、妻は今でもこのことに怒っており、離婚に応じてくれず、そのため離婚裁判で勝訴するしか離婚を成立させる方法はないと思います。もっとも、このように私の方に破綻原因がある場合、裁判所は私の方からの離婚請求を認めてくれるのでしょうか?私たちは在日韓国人ですが、韓国法の場合有責配偶者からの離婚請求は難しいと聞いています。ご教示ください。」

 

「確かに自分が悪い。でも何とかして配偶者と離婚したい。」と思われている方は大勢いらっしゃるのではないでしょうか。在日韓国人夫婦のご相談者様からも、このようなご相談をしばしば受けることがございます。

では、このような夫婦に適用される韓国法は、有責配偶者からの離婚請求についてどのように定めているのでしょうか。

この点、かつて、韓国の大法院は有責配偶者からの離婚請求に対しては極めて厳しい姿勢を取っておりました。すなわち韓国大法院1987年4月14日判決(86ム28)は、「・・・相手方配偶者も離婚の反訴を提起している場合、あるいは専ら意地と報復的感情から表面的に離婚に応じないが、実際には婚姻の継続と到底両立しない行為をするなど、その離婚の意思が客観的に明白な場合」に有責配偶者からの離婚請求を認めておりました。つまり、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められないとしたのです。

そして、日本の最高裁判所平成9年2月25日判決も、上記大法院判例に基づき、有責配偶者からの離婚請求を認めました。

 

その後、韓国大法院は有責配偶者からの離婚請求が認められる具体的な判断要素を示すに至りました。少し長いですがご紹介します。

韓国大法院2015年9月15日判決(2013ム568)は、「・・・しかしながら、大法院判例が有責配偶者の離婚請求を許容していないことは、既に見たように、婚姻制度が要求する道徳性に背馳し信義誠実の原則に反する結果を防止することにあるのであって、婚姻制度が追求する以上の信義誠実の原則に照らしてみても、その責任が必ず離婚請求を排斥しなければするほど残っていない場合には、そのような配偶者の離婚請求は、婚姻と家族制度を形骸化するおそれがなく、社会の道徳観・倫理観にも反しないとするので、許容されるとみなければならない。

そして、大法院判例においても既に許容されているように、相手方配偶者も婚姻関係を継続する意思がなく、一方の意思による離婚乃至追放離婚のおそれがない場合はもちろん、さらには離婚を請求する配偶者の有責性を喪失させる程度に相手方配偶者及び子女に対する保護と配慮がなされる場合や、年月の経過に基づき婚姻破綻当時現在していた有責配偶者の有責性と相手方配偶者が受けた精神的苦痛がしだいに弱化し双方の責任の軽重を厳密に検討することがこれ以上無意味な程度となった場合等のように、婚姻生活の破綻に対し有責性がその離婚請求を排斥しなければならない程度に残ってはいない特別な事情がある場合には、例外的に有責配偶者の離婚請求を許可することができる。このとおり、有責配偶者の離婚請求を例外的に許可することができるかどうかを判断する場合には、有責配偶者の責任の態様、程度、相手方配偶者の婚姻関係意思及び有責配偶者に対する感情、当事者の年齢、婚姻生活の機関と婚姻後の具体的な生活関係、別居期間、夫婦間の別居後に形成された生活関係、婚姻生活の破綻後の様々な事情の変更の有無、離婚が認定される場合の相手方配偶者の精神的、社会的、経済的状態と生活保障の程度、未成年子女の養育、教育、福祉の状況、その他婚姻関係の様々な事情を考慮しなければならない。」としました。

 

この大法院判決に拠ったとしても、有責配偶者からの離婚請求が認められるかどうかは最終的にはケースバイケースと言わざるを得ません。ですが、具体的な判断要素が示されるに至りましたので、人生の再スタートをきるためには、やはりご決断のうえ離婚裁判を提起せざるを得ないと思います。

 

 

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