「私たち夫婦は二人とも韓国籍を有しております。
先般妻が犯罪行為を行い、刑務所に収容されてしまいました。面会の際妻は大変反省していると述べておりましたが、二人で話し合った結果、離婚しようということとなりました。
ですが、韓国人の場合協議離婚を成立させるためには韓国領事館に赴く必要があります。しかし、妻は刑務所に収監されておりますので韓国領事館に赴くことができません。刑期満了まであと5年もあります。
妻も離婚には同意してくれているのですが、それでも離婚裁判まで起こして離婚を成立させなければならないのでしょうか?私としても裁判所に出廷することはできれば避けたいと考えております。ご教示ください。」
夫婦二人とも離婚には同意している。しかし夫婦の一方がどうしても韓国領事館に赴くことができない事情がある。このようなご相談もしばしば受けることがあります。
そのような場合、調停に代わる審判に基づき離婚を成立させることも可能と考えます。
すなわち、管轄の家庭裁判所に対し、まずは離婚調停申立書を提出することになりますが、その申立書の中で、①夫婦双方が離婚に同意していること、②もっとも夫婦の一方が刑務所に収監されているため韓国領事館に赴くことができず協議離婚を成立させることができないこと、③そこで調停に代わる審判での離婚成立を希望していること等を記載し、離婚調停を申し立てます。
そして、その後家庭裁判所で検討がなされ、収監されている夫婦の一方の離婚希望との意向も上申書等により確認することができれば、家庭裁判所は調停に代わる審判を行うことがございます。最終的には家庭裁判所の判断次第となりますが、その判断次第では一度も家庭裁判所に出廷することなく上記審判がなされることもあります。
そして、その審判書が当事者らに送達され2週間が経過するまでにいずれからも異議が出されなければ、その審判は確定することとなります(なお、念のため、審判書には、本審判が確定した場合家事事件手続法287条に基づき確定判決と同一の効力を有する旨記載がなされることが好ましいといえます。)。
そして、その後、審判書、送達証明書、確定証明書及びこれらの翻訳その他必要書類を韓国領事館に提出すれば、離婚成立の記載が婚姻関係証明書等に記載されることとなります。
夫婦双方が離婚に合意しているのでしたら韓国領事館に赴き協議離婚の手続を行うにこしたことはありません。ですが、なんらかの事情により、長期間韓国領事館に赴くことができない場合もございます。
そのような場合にはこの調停に代わる審判手続を利用し離婚を成立させることも可能となる場合がございますので、一度ご検討ください。