「私たちの父(韓国籍者)が2023年10月に亡くなりましたが、
相続人は子である私たち3人となります。そして、私が長男にあたります。
私たち兄弟は昔から仲が悪く、誰が父の遺骨を受け取るか、どこの霊園に納骨するかで意見が対立してしまっております。
生前父はA霊園に自分の遺骨を埋葬して欲しいと述べておりましたが、私の自宅からはあまりにも遠く、
私はB霊園での埋葬を希望しております。そのことも兄弟間の意見対立の原因です。
このような場合、どのようにしてご遺骨の所有者を決めるのでしょうか?ご教示ください。」
亡くなったお父さんを懇ろに弔いたいというお気持ちはどなたも一緒。
しかし、悲しいことに、誰がお父さんのご遺骨を受け取るのかなどで意見が対立してしまっている。
頻繁にあることではありませんが、このようなご相談もしばしばうかがうことがございます。
では、このような場合に適用される韓国法は、ご遺骨の所有権者についてどのように定めているのでしょうか。
まず、韓国民法1008条の3は、「墳墓に属する1町歩以内の禁養林野と
600坪以内の墳土であるの農地、族譜と祭具の所有権は祭祀を主宰する者がこれを承継する。」と定めております。
そして2008年11月20日韓国大法院判決(2007タ27670)は、次の①以下のとおり述べ、
従来の大法院判例を変更いたしました。
①死亡した者の遺骨は、韓国民法1008条3所定の祭祀用財産として祭祀を主宰する者に承継される。
②もっとも、1999年1月13日法令第4199号で改正された旧民法はもちろん現行民法においても
「祭祀を主宰する者」が祭祀用財産を承継するとだけ規定し、それが誰なのかどのように定めるのかについては何らの規定もおいてはいない。
③この点従来韓国大法院は、共同相続人のうち宗孫がいる場合、その者に祭祀を主宰する者の地位を維持することができない特別な事情がある場合を除き、
通常宗孫が祭祀主宰者となると判示していた(一般的に宗孫とは「長子系の男子孫であり嫡長子」を指す。)。
④しかしながら、今般、祭祀主宰者については、優先的に亡くなった者の共同相続人間の協議により定められ、
協議が成立しない場合には祭祀主宰者の地位を維持することができない特別の事情がない限り亡くなった者の長男が祭祀主宰者とする。
この新しい法理は、この判決宣告以後の祭祀用財産の承継がなされる場合にのみ適用される。
⑤なお、遺骨の埋葬場所指定に関する亡くなった者自身の生前意思は尊重されなければならないが、遺骨は祭祀主宰者に承継されているのであるから、
それに関する管理及び処分は終局的に祭祀主宰者の意思に基づきなされなければならない。
以上の韓国大法院判決に基づき、誰がお父様のご遺骨の所有権者なのかを判断していくこととなります(通常遺産分割の際には法定相続分をベースとして判断されることとなりますが、
それとは異なる考え方となります。)。
そしてお父様は2023年10月に亡くなられたとのことですので、上記④に基づき、まずは共同相続人であるご兄弟皆様で協議を行い、
その協議が成立しない場合には、原則として長男であるご相談者様がお父様のご遺骨を所有することとなります。
そして、上記⑤に基づき、お父様のご遺骨の埋葬場所は、最終的には遺骨の所有権者であるご相談者様が判断することとなります。
もっとも、私個人の意見ではありますが、お父様を懇ろに弔いたいというお気持ちは、ご兄弟共通のお気持ちだと思います。
そのような場合でしたら、形式にとらわれることなく、お父様のご遺骨を「分骨」し、それぞれがそれぞれの方法でご遺骨を弔うことも一つのやり方だと思います。
分骨をすればするほど、亡き人に対し「手を合わせる」方が多くなり、それだけ亡くなられた方も喜ばれるのではないでしょうか。