「多額の借金を負っていた父が先日亡くなりましたので相続放棄をしたいと考えております。私は在日韓国人なのですが、日本の裁判所で相続放棄をすることは可能なのでしょうか?」というご相談をよく伺います。
それに対する回答としましては・・・・
「日本で相続放棄の手続きをすることができる場合とできない場合がある」
という回答になるかと存じます。
すなわち、日本の裁判所が上記相続放棄を受け付けてくれるか否かの問題を「国際裁判管轄」の問題といいますが、この点について神戸家庭裁判所平成6年7月27日審判は、「・・・被相続人の最後の住所地が神戸市であるから、本件相続放棄申述についてはわが国に裁判管轄があり、当裁判所の管轄に属する。」旨判示しました。
また、東京高等裁判所平成14年3月5日判決は、「・・・ところで,被相続人・・・は,韓国籍を有し,日本国籍を有する者ではないものの,証拠及び弁論の全趣旨によれば,同人は第二次世界大戦前からの日本居住者として永住してきた者であり,東京都内等に不動産を所有するほか預貯金ないし現金を有するなど,日本に遺産が所在することが認められ,かつ,同人の相続人がわが国に居住していることなどに照らせば,わが国との生活関連性を有するということができるから,相続放棄の申述については,わが国にも国際裁判管轄権があると解される。したがって,同人の同相続人らは東京家庭裁判所に対しても相続放棄の申述を申し立てることができ」る旨判示し,相続放棄における日本での国際裁判管轄を認めました。
そして、「渉外家事事件執務提要」(最高裁判所事務総局編)は、「・・・相続の要素は、被相続人、遺産及び相続人の3つであるが、これらの要素が全て日本にある場合はもちろん、遺産が日本に所在する場合には、その他の要素が外国にあっても日本に一定の関係を有すれば、我が国に国際裁判管轄権が認められるものと考えられている。・・・限定承認に関するものであるが・・・遺産は日本にあり、その相続人も日本に居住している場合や、被相続人は相続開始の約1年前にそれまで居住していた日本から本国である韓国に帰国してしまったものの、負債である遺産が日本に残っており、相続人が日本に居住している場合などに我が国の裁判管轄権を認めている。」とします。
以上裁判例等から、日本の裁判所で相続放棄の手続きを行うことができるか否かの判断要素は、被相続人の相続財産が日本にあり、被相続人の最後の住所地が日本であるか否か等によると思われます。
ですので、上記ご質問に対する回答としましては、「日本で相続放棄の手続きをすることができる場合とできない場合がある」という回答になるかと存じます。
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