「私の浮気が原因で、妻と不仲になってしまいました。私と妻は一緒に会社を経営していましたが、私の浮気をきっかけとして、妻との間で会社をとりまく様々な民事裁判が起きました。
確かにきっかけは私の浮気でした。ですが、その後は妻の方から夫婦関係を回復させるような働きかけも一切ありません
こんな場合でも、裁判所は私の方からの離婚請求を認めてくれるのでしょうか?私たちは在日韓国人ですが、韓国法の場合有責配偶者からの離婚請求は難しいと聞いています。ご教示ください。」
まず、韓国の大法院は、有責配偶者からの離婚請求に対しては厳しい姿勢を示しておりますが、例外的に有責配偶者からの離婚請求が認められる場合があるとしております。
韓国大法院2015年9月15日判決(2013ム568)は、「・・・婚姻生活の破綻に対し有責性がその離婚請求を排斥しなければならない程度に残ってはいない特別な事情がある場合には、例外的に有責配偶者の離婚請求を許可することができる。このとおり、有責配偶者の離婚請求を例外的に許可することができるかどうかを判断する場合には、有責配偶者の責任の態様、程度、相手方配偶者の婚姻関係意思及び有責配偶者に対する感情、当事者の年齢、婚姻生活の機関と婚姻後の具体的な生活関係、別居期間、夫婦間の別居後に形成された生活関係、婚姻生活の破綻後の様々な事情の変更の有無、離婚が認定される場合の相手方配偶者の精神的、社会的、経済的状態と生活保障の程度、未成年子女の養育、教育、福祉の状況、その他婚姻関係の様々な事情を考慮しなければならない。」としました。
そして、夫の女性問題を契機に別居生活が開始し、その後経営する会社をとりまく訴訟等に発展した夫婦間の離婚裁判において、新たに韓国大法院2022年6月16日判決(2022ム10109)は、上記判例を引用したうえでさらに以下を付け加え判示し、審理を高等裁判所に差し戻しました。
「婚姻破綻状態を招来する直接的・一次的責任が夫婦のうち一方にあったとしても、その後相手の対処及び歳月の経過に基づきその有責が希釈され、相手の間接的・二次的な責任と不可分的に混合・相殺され、最初の有責配偶者に破綻の責任を完全に失わせることが困難な状態であるかを判断するにあたっては、次のような事情が考慮されなければならない。すなわち、婚姻は、異なる人格体が愛情と信頼に基づいて一つの共同生活体をなす結合組織なので、民法第826条第1項は、夫婦の同居及び協力義務を規定することにより、夫婦が同意同伴し、精神的・肉体的・経済的な各方面で互いに協力して共同生活を営む義務があることを明示している。ところが、欠点や欠陥のない人格体はごくまれであり、婚姻生活の途中で配偶者の一方または双方の人格的な弱点が現れ、相互に葛藤と不和が起こり、円満な婚姻生活に支障が生じる場合は当然予想されることなので、婚姻関係で夫婦が協力してそのような障害を克服することは、夫婦間の協力義務で起きる普遍的な課題である。したがって、婚姻生活中にそのような障害が発生した場合、配偶者双方は夫婦という共同生活体として結合関係を維持するための意志を持ち、各自相手に対する愛情と理解、自制、説得を通じてそのような障害を克服するために努力する共同の義務がある。したがって、配偶者の一方の性格的欠陥や批判を受ける行動で、結婚の安寧を害する葛藤や不和が起きたとしても、それですぐに婚姻関係が回復できない破綻状態に陥っていない以上、そのような葛藤と不和をいやし、円満な婚姻関係を維持するために努力する義務は配偶者双方にあり、それでも一方の配偶者の性格や行動に欠陥があるという理由で、その相手が円満な婚姻関係を維持するための努力を道外視したまま対話を拒否して敵対視するなど、夫婦共同体としての婚姻生活を事実上放棄する態度として一貫するのであれば、その相手もやはり婚姻関係において守らなければならない義務を果たせなかったと見ることができる。このような状況が改善されず、配偶者双方がすべて婚姻関係を維持するための意欲を喪失したまま相互傍観または敵対する状態で相当な期間が経過した末に結局婚姻関係が元に戻せないほどの破綻に至った場合、配偶者双方が婚姻関係破綻に対する責任を分けて持たなければならないだろうし、当初一方の人格的欠陥がそのような葛藤または不和の端初となったという事情だけで、その者に離婚請求をすることができないほどの主な責任があると断定することはできない(最高裁判所2010.7.29.宣告2008ム1475判決等参照)。」
この大法院判決に拠ったとしても、有責配偶者からの離婚請求が認められるかどうかは最終的にはケースバイケースと言わざるを得ません。ですが、具体的な判断要素が示されるに至りましたので、人生の再スタートをきるためには、やはりご決断のうえ離婚裁判を提起せざるを得ないと思います。